流動性とリターンの関係について ~オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れる意義~
資産運用において重要なテーマの一つが、「どの程度の資産をいつでも使える状態にしておくべきか」そして「どの程度の資産を長期運用に振り向けるべきか」というバランスです。
この判断の背景には、投資の基本原則である「流動性と期待リターンのトレードオフ」があります。
一般的に、すぐに現金化できる資産は高い利便性を提供する一方で、期待リターンは比較的低くなる傾向があります。反対に、一定期間資金を拘束する投資には、流動性を犠牲にする対価として、より高いリターンが期待される場合があります。
本稿では、流動性とリターンの関係を解説するとともに、オルタナティブ投資をポートフォリオにどのように組み入れるべきかについてご説明します。
流動性とは何か
流動性とは、保有する資産を市場価格に近い水準で迅速に現金化できる度合いを指します。
流動性の高い資産の例としては以下が挙げられます。
- 現金・預金
- MMF(マネー・マーケット・ファンド)
- 上場株式
- ETF(上場投資信託)
- 国債や投資適格債券
これらの資産は、通常数日以内に売却・換金することが可能です。
一方、流動性の低い資産には以下のようなものがあります。
- プライベート・エクイティ
- プライベート・クレジット
- 非上場不動産
- インフラ投資
- ベンチャーキャピタル
これらは投資期間が数年から十年以上に及ぶ場合もあり、途中で自由に換金できないことが一般的です。
なぜ流動性は重要なのか
流動性は投資家にさまざまな価値を提供します。
資金の柔軟性
急な支出や事業機会、ライフイベントなどに対応するためには、必要なタイミングで資金を引き出せることが重要です。
ポートフォリオの機動性
市場環境の変化に応じて資産配分を見直したり、リバランスを行ったりする際にも流動性が役立ちます。
心理的な安心感
必要な時に資金を利用できるという安心感は、市場の変動局面でも冷静な投資判断を維持する助けとなります。
このような理由から、投資家は高い流動性に対して一定の価値を認めており、その結果として流動性の高い資産の期待リターンは低くなる傾向があります。
「流動性プレミアム」という考え方

オルタナティブ投資を理解するうえで重要なのが、流動性プレミアム(Liquidity Premium)という概念です。
流動性プレミアムとは、投資家が一定期間資金を拘束する見返りとして期待される追加的な収益機会を指します。
例えば、
- 上場REITは日々売買が可能
- 私募不動産ファンドは数年間資金が拘束される
という違いがあります。
後者は流動性が低い分、投資家に対してより高いリターンを提供することを目指して運用されるケースが多くあります。
もちろん、高い期待リターンが保証されるわけではありませんが、長期的な視点で見ると、市場は流動性を提供する投資家に対して一定の報酬を与える傾向があると考えられています。
オルタナティブ投資の主なメリット

適切に活用されたオルタナティブ投資は、ポートフォリオにさまざまなメリットをもたらす可能性があります。
リターン向上の可能性
プライベート市場では、上場市場では得られない投資機会や非効率性を活用することで、超過収益の獲得を目指すことができます。
分散効果
オルタナティブ資産は、株式や債券とは異なるリターン要因によって収益が生み出されることが多く、ポートフォリオ全体の分散効果が期待できます。
独自の投資機会へのアクセス
未上場企業への投資やインフラ資産、プライベートレンディングなど、一般の公開市場ではアクセスできない投資機会に参加できます。
短期的な市場変動の影響を受けにくい
日々市場価格が変動する上場資産と異なり、短期的な市場ノイズに左右されにくいという特徴があります。
オルタナティブ投資に伴う留意点
一方で、オルタナティブ投資には十分な理解が必要です。
主な留意点として以下が挙げられます。
資金拘束期間の長さ
投資期間中は自由に資金を引き出せない場合があります。
評価額の透明性
上場資産と比較すると、価格評価の頻度が低く、評価手法も異なります。
長期投資が前提
多くの商品は5年〜10年以上の運用期間を想定しています。
運用会社選定の重要性
マネージャーによる運用成果の差が大きく、投資先の選定が重要になります。
ポートフォリオにおける位置づけ

重要なのは、「流動性の高い資産」と「流動性の低い資産」のどちらかを選ぶことではありません。
両者を適切に組み合わせることが、長期的な資産形成において重要です。
第一層:流動性資産
短期的な支出や緊急時の備えを目的とする資産です。
例
- 現金・預金
- MMF
- 短期債券
第二層:コア資産
長期的な資産成長の中核となる資産です。
例
- 国内外株式
- 債券
- インデックスファンド
- ETF
第三層:オルタナティブ資産
分散効果やリターン向上を目的として組み入れる資産です。
例
- プライベート・エクイティ
- プライベート・クレジット
- 不動産
- インフラ
- その他オルタナティブ戦略
実践的な考え方
オルタナティブ投資を検討する際には、以下の点を確認することが重要です。
今後3〜5年間で必要となる資金は十分に確保されているか
大きな支出や事業投資の予定はないか
どの程度のリスクを許容できるか
投資期間はどのくらい確保できるか
市場環境に左右されず長期保有できるか
十分な流動性を確保したうえで余裕資金を長期運用に振り向けることが、オルタナティブ投資を活用する際の基本的な考え方となります。
まとめ

流動性は「柔軟性」と「安心感」を提供する重要な要素である。
一般的に、流動性を犠牲にすることでより高いリターン機会を追求できる可能性がある。
オルタナティブ投資は、リターン向上や分散効果を期待できる一方で、長期的な資金拘束を伴う。
流動性資産とオルタナティブ資産は対立するものではなく、相互補完的な役割を持つ。
最適な配分は、投資家それぞれの資産状況、投資目的、リスク許容度、流動性ニーズによって異なる。
長期的な資産形成においては、必要な流動性を確保しながら、一部の資産を長期的な成長機会へ振り向けることで、よりバランスの取れたポートフォリオ構築を目指すことが重要です。
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